日本では、高齢者の割合は増える一方です。
親と同居している家庭もありますが、そうでなくても、田舎に高齢の両親がいるという家庭はどんどん増えています。


誰もが、何らかの形で介護に関わらなくてはならなくなったことは明らかです。
しかし、両親あるいは一人になった親の面倒を見るということは大変なことです。
自力では生活することが難しくなった親の世話をするには、数ある選択肢の中から、一番自分に合っていて、できそうな介護のやり方を選ぶことが必要です。


ここでは、高齢者の介護のかたちを紹介し、すでに介護をされている人やこれから介護が必要になりそうな方々の参考にしていただけたらと思います。

親の介護をいつ始めるか

子どもが親と同居している場合には、親が加齢に伴い、あるいは病気のために体が不自由になれば、できる人が手助けすることになりますから、自然に介護が始まります。
同居していない場合は、必要に応じて何らかの形で介護にかかわることになりますが、そのきっかけはいくつかあります。

・急激な変化があった場合

高齢になった親が、急に脳出血を起こした、心筋梗塞で入院した、あるいは悪性の病気が見つかって手術など入院治療が必要になることがあります。
このようなときは、迷っている余裕はありません。
入院治療を受けると、退院後にはどうしても何らかの援助が必要になります。


同居しているならば、家庭で介護できるかもしれません。
しかし、症状が重度でとても家庭での介護が難しい場合もあります。
医師やケアマネージャーさんとも相談して、家庭介護ができるのか、ヘルパーさんを頼めるのかといったことをよく相談する必要があります。


別居の場合は、誰が主になって介護するのか、他の人はどのようにして手伝うか十分に話し合いをしておく必要があります。
介護生活は数か月で終わることもありますが、5年、10年になることもあります。
一人あるいは一家族だけで全部をやるには負担が大き過ぎます。


ですから、主になる人だけでなく離れたところにいる人も、金銭援助をするとか、病院に行くときの送迎だけはする、毎月見舞いに行くなど、できることをして支えなくてはならないのです。

・親本人や遠くに住んでいる兄弟や親戚から親の介護を頼まれる

最近は親世代もかなり自立していて、自分が丈夫なうちは、あるいはある程度ヘルパーさんの手を借りるようになっても、子ども世代の世話になろうとしない人々がいます。


しかし、老化が進んで自分で出来ることが減って不自由が多くなり、心細さもあって、子どもたちに同居したり、近くに住んで手助けしたりすることを望むことがありますね。
本人が頼まないまでも、遠くに住んでいるほかの子どもたちや、親戚の人が、「このまま老人が一人で住むのは無理だから、近くにいるあなたに介護を頼みたい。」と言ってくることもあります。


このような要請があったら、「見たところ大丈夫そうだし、こっちにも都合があるから介護なんて無理ですよ。」と突っぱねるのは問題です。
兄弟や親戚の人があなたに親の介護を丸投げするつもりだと決めつける前に、親が本当に介護の必要な状態になっているのかをよく調べてみることが先決です。


親の介護を一人で全部引き受けることには無理がありますが、自分なりにできることを考えてみることは非常に大事です。
「ああ、あの時こうしてあげていたら良かったのに。」と後悔することだけは避けたいところです。

・老化が進んだ場合

本人やまわりの人の要請がなくても、親の介護が必要かどうかいつも注意して見ていることは重要ですね。
高齢者といっても、70代ぐらいまでは、何とか二人であるいは一人でも生活できるのが一般的です。
でも80代90代になると、病気をしていなくても、一人で日々の生活の全部をこなすことは無理になります。


あるプロのヘルパーさんの話では、「人間は90歳を超えると一人暮らしは無理ですね。」とのことです。
お手伝いは要らないまでも、見守りは必要となるのです。
ただ、子ども世代が遠方に住んでいる場合は、親がどのくらい衰えたのか、どの程度援助が必要なのかわからないために、いつ介護をするべきか決めかねることもあります。
子ども世代の人は、親が手紙もくれないし、電話もかけてこないから大丈夫なのだろうと過度の安心をするのは禁物です。


事実、あまり長く親から連絡がないので、息子さんが実家に行ってみたら親御さんが部屋で倒れていたという例もあるのです。
高齢の親御さんがいる人は、連絡を取り合い、安否を尋ねることが重要です。
体の具合は悪くないか、日常生活に支障はないかなどおおざっぱでも構いません、時々確認しておきたいところです。
ある息子さんは電話で母親が「時々近所の人に手助けしてもらっているんだよ。」と言うのを聞いて、これでは介護に通わなくてはと思ったそうです。

以上が介護を始めるきっかけですが、それぞれのケースで親と同居する、近くに住んで介護に通う、遠方にいても定期的に介護に通うなどの方法を考える時期の目安としてください。

誰がお世話をするのか

誰が主になって介護をするのかは、とても大事な問題です。
昔は長男の嫁が両親の世話をするというのが不文律でしたが、現在はずいぶん変わりました。


そもそも、子どもを持たない人もいますし、長男は遠くに住んでいることもよくあることです。
娘の世話になる方が気楽で良いという人もいますが、必ずしも娘さんが近くにいるとは限りません。
一人っ子同士が結婚していたら、4人の親を2人でお世話することだってあり得ます。


できれば、親が病気で倒れて、介護が必要になったというような事態になる前に、誰がどの程度介護に携わることができるか、親が一人になったら、誰かが自宅に引き取る、あるいは自分が親の家に戻る、あるいは近くに引っ越す用意があるかなどざっくばらんに相談しておけたら一番良いですね。


肝心なのは、誰か特定の人が介護の全部を引き受けるのではなく、あくまでもリーダーシップをとる人を決めて、他の人はその人に協力して、大勢で介護を支えることが必要です。
主になる人は、おじいちゃんやおばあちゃんが病気ならば、病院の手配をしなくてはなりませんし、見舞いにも行くことになります。


老化が進んだらホームを探すことも必要になります。
そうした雑務を一手に引き受けることになるのですから、その人のやり方が少々気に入らないとしても、周りの人は不満を漏らさずに、側面から協力を惜しまないことが必要です。


また、親世代の人は自分の家に他人が入り込むのを嫌がる傾向にあります。
しかし、家族だけではとても手が足りない場合には、積極的にヘルパーさんを頼むことも必要です。
そうしないと、介護が長くなってくると介護する人も疲れて、体の具合を悪くすることがあり得ます。


ある中年夫婦は夫の母親と同居していました。お嫁さんは体が弱いのにも関わらず、二人の子どもの育児をしながら、仕事をしていました。
おばあちゃんが体調を崩してからは介護も加わってとても疲れ切っていました。
非常に不幸なことでしたが、お嫁さんの方がおばあちゃんよりも先に亡くなってしまいました。
兄弟に協力を頼むとか、ヘルパーさんを入れるなど、もう少し工夫できなかったのかと悔やまれました。

そのような事態を避けるためにも、介護はできるだけ多くの人が協力してするべきですね。

遠距離か近距離か、同居するか通いながら手伝うか、ホームにお願いするか

自分の親がそろそろ介護が必要だということがはっきりした場合には、どんな選択肢があるか考えなければなりません。
まずは、それぞれのメリットとデメリットを考えてみましょう。

・遠距離か近距離に住むか

メリットデメリット
遠距離介護それぞれが、独立した家庭を維持できる。
親世代の人も子世代の人も転居しなくて良い。
毎日の生活の中で高齢の親の手助けができる。
遠方の親がどうしているかと不安に思う必要がない。
近距離に住む場合遠距離を通うのに、時間とお金がかかる。
緊急事態に対処するのが難しい。
親世代は一人になった場合不安感がある。
高齢の親が子どもの家あるいは近くに引っ越すのは負担になる。
子世代も引っ越すには自宅を処分するなど負担が大きい。
子世代が現役で働いている場合は、引っ越しは難しい。
遠距離と近距離の比較

・同居するか通いか

メリットデメリット
同居して介護いつでも24時間介護ができる。

親の様子が良くわかるので、介護の必要がすぐに分かる。
介護する人の負担が大きい。

バリアフリーになっていない住宅では、介護するのが難しい。
通いながら介護介護人が休む時間が取れる。

遠距離介護に比べると、通うのに負担が少ない。
高齢者の急な変化に対応するのが大変。

親が、認知症になった場合は、夜中に呼び出されることもある。

逆に親は、介護してくれる子どもの呼び出し方が分からないという事態も発生する。
同居と通いの比較

・家庭介護かホームにお願いするか

メリットデメリット
家庭介護高齢者がホッとできる。
住み慣れた家で安心感がある。
介護人の負担が大きい。
専門的な介護は難しい。
ホームに入居介護人の負担が激減する。

専門家のきちんとした介護を受けられる。

食事内容が充実し、薬の飲み忘れなどがなくなり、健康管理がしっかりしている。
親がホームに馴染めない、嫌がることがある。

自由に面会できないことがある。

最終的にホームに行ってもらう場合の問題と解決策

自分の両親は自分でみたいと思う人も多いです。
しかし、父母が重い病気(例えば脳梗塞)に罹って、後遺症が酷い場合、素人ではとても介護できないことがあります。
住宅事情でバリアフリーになっていないと体の不自由なお年寄りが生活することが難しくなることもあります。
介護人が高齢になっていて、介護が無理ということもあり得ます。
そのような場合には、ホームに行ってもらうことも考えなくてはなりません。


そんなときに、ホームに入居するにはいくつかの問題があります。
その問題と解決のコツを紹介します。

・本人が行きたがらない

高齢のおじいちゃん、おばあちゃんは自分の家が一番です。
体が不自由になったからと言って、自分から「ホームに行きたい。」と言う人はまずいません。


では、本当のことを隠して、「一時的にホームに行ってくださいね。」と言うのはお勧めできません。
あるおばあちゃんは、ホームに入居しましたが、「もうじき家族が迎えに来てくれるはずだから。」と毎日家族の迎えを待っていました。
ホームの職員さんも、「ちょっと遅れていますね。」とかなんとか口調を合わせていましたが、だましているようで辛かったと言っています。


正直に言うのは難しいですが、「お父さんの体具合がとても悪いので、家ではとても介護できないのです。」とか、「家の構造がバリアフリーになっていないので、トイレやお風呂を使えなくなってしまったので、どうしてもホームでなければ生活できないのです。」というように説明する方が後になって、根深い不信感につながることなく良い関係が保てます。

・周りの人が納得しない

これも大きな問題です。
遠くにいる兄弟や親戚が、「おばあちゃんをホームに入れるのは可哀そうよ。」と非難することはよくあることです。
老人は自宅でみるべきだと考えている人がまだまだ多いからです。


しかし、実際には一般家庭では、家の構造上とても介護ができないことがあります。
また、介護に当たる人が、一人だけとか、その人自身が高齢で思うように動けないこともあるわけです。
現在は、ホームは「不親切な家族が親を無理やり行かせる悲惨なところ」ではありません。
かえって、自宅よりも清潔で、バランスのとれた食事、行き届いたケアが受けられる場所です。
むしろ自信をもって、家族や親戚にも説明したいところです。


それでもなお、納得しない人もいますが、次のエピソードは参考になります。


仕事でヘルパーをしている女性の実体験ですが、この女性は長い間ヘルパーとして高齢者の訪問を仕事としていました。
ところが遠方にいる自分の母親が高齢となり、介護が必要になりました。
この人は一人っ子で他に介護に当たれる人はいなかったのですが、他県に住んでいて、母のそばに引っ越しすることはできず、母親を自宅に連れてくることもできませんでした。
そこで、環境の良いホームを探して、母親を入居させました。


すると親戚が一斉に、「たった一人のお母さんをホームに入れるとは酷いじゃないか。」と非難しました。
この女性は悩みましたが、結局お母さんのためにも自分のためにもホームの方がずっと良いと判断して、親戚の人のブーイングを聞かなかったことにしたのでした。
彼女はヘルパーの仕事をしていたので、それがいかに大変か、一人で全部をすれば自分も家族も倒れてしまうことをよく知っていたので、親戚の言うことを聞き流し、「結局は一番良い形で母を見送りました。」と話していました。

・良いホームを見分ける

ホームと言っても色々な種類があって、中には虐待が行われていたというニュースを聞くこともあります。
自分の身内をお願いするなら、少しでも良いホームを見つけたいと思うのは当然です。
料金についても高過ぎれば払いきれなくなることは目に見えています。


まずはケアマネさんに相談して、当人の状態を把握してもらい、金銭的にも払える上限を示して、自宅になるべく近くて、通いやすいホームを探してもらうのが近道です。
特別養護老人ホームなら、料金も安く、一旦入居すれば、いつまでもいられるのでとてもいいですね。
遠方にしか家族がいない場合にも洗濯をしたり、日常の消耗品を買ったりしてもらえるので、逐一家族が出向いて行かなくても良いので本当に助かります。


ただし、特養に入りたいという希望者は多く、場所によっては何百人待ちというところもあります。
いくつか候補になるホームに希望を出して、空くのを待つことになります。
やむを得ない場合は、老人介護施設のショートステイなどを利用して、特養の空待ちをすることもあります。
空待ちと言っても、ただ待つだけではなく、親がずっとお世話になるかもしれない施設にはあらかじめ見学に行って、設備は清潔で整っているか、入居者の様子はどうか、職員さんの対応は良いかなど、チェックしておくことは重要です。

実例から学ぶ

介護の仕方は、それぞれのケースで違ってきますが、実際にあった例を紹介します。

Aさんの例

Aさんは長男で結婚当初より両親と同居していました。
両親は元気で、70歳を過ぎておばあちゃんが大病をするまでは、介護などの心配は一切ありませんでした。


おばあちゃんは病気ではありましたが、まだ年齢的には体が不自由ということはなかったので、Aさんと奥さんとで病院に送り迎えする、入退院に付き添うぐらいで、特別な介護は必要ありませんでした。
病気が悪化してからは、入院させてもらえたので、数か月の病院生活の間は、Aさんたちは見舞いに行くだけでしたが、闘病生活1年半ほどで亡くなりました。


おじいちゃんはそれから、10年ほど元気に過ごしましたが、脳梗塞の発作を起こし入院しました。
かなり強いマヒが残ったため、お医者さんもこのまま家でのお世話は無理との判断でした。お医者さんが紹介状を書いてくれて特養に入居できました。
おじいちゃんはホームを嫌がることもなく、そこに1年ほどいてから安らかに最後を迎えました。


Aさんは、同居していたので、家庭介護を覚悟していましたが、両親ともほとんど家庭介護をする必要がなかったのは幸いだったと言っています。

Bさんの例

Bさんは妹が一人いる2人兄弟でしたが、二人とも首都圏で生活していました。
地方都市に住む両親は比較的元気だったので、二人が80歳になるまではほとんど介護の必要はありませんでした。


しかし、80歳を過ぎるころからおばあちゃんが体調を崩したり、転んでけがをしたりするというようなことがあって、Aさんの妻とAさんの妹が交代で手伝いに行きました。
そのまま遠距離介護をすることになると思われましたが、Aさんは先のことを考えて、定年後には田舎に帰ることにしました。
実家が狭かったので、二人は近所のアパートに住み、毎日両親宅に手伝いに通いました。


5年後にはおじいちゃんが1か月半の入院生活の後に他界し、おばあちゃんが一人残されました。
おばあちゃんは多少体が不自由だったことと加齢により認知症も加わり、一緒に生活することが無理だったので、ホームに申し込みをしました。
運よく近くの特養に入ることができたので、Aさんたちは毎日面会に行くことができ、おばあちゃんも帰りたいと言いませんでした。
おばあちゃんは、ホームで3年ほど生活した後に、穏やかに最後を迎えました。


Aさんは、親との同居は無理だったけれど、ホームに入れたのでとても助かったと思っています。

Cさんの例

Cさんは首都圏で働いていましたが、田舎に母親が一人で生活していました。


おばあちゃんが病気をしてからは、Cさんの妻が時々遠距離介護に通い、ヘルパーさんも頼んでお世話をしました。
Cさんはまだ働き盛りだったので、おばあちゃんの病気がかなり重くなっても田舎に帰るわけにはいきませんでした。
おばあちゃんは施設に入ることを嫌がったので、数人のヘルパーさんを頼んで終日付き添いをしてもらい、自宅にいることができました。
本当に末期になって病院に入院し亡くなりましたが、Aさんたちは最後まで遠距離介護をしました。
Aさんの母親はかなりの年金をもらっていたので、大勢のヘルパーさんを頼むことができたのだそうです。

以上3つの例から、介護は何が何でも自宅で本人の望む通りのお世話をするのがいいという訳ではないことが分かります。
最初から同居していても良いし、途中で田舎にUターンすることもできるし、遠距離のままでも介護はできるのですね。

まとめ

高齢の両親がいる人には介護についていろいろな選択肢があります。
遠距離介護、通いでの介護、同居して介護することもできますが、ホームを選択することもできます。
両親と子どもたちの双方が納得できる方法で、お互いが気持ち良く介護し、介護を受けることができたらいいですね。

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