今回のお悩み:仕事と介護を両立していくための制度などについて教えてほしい
今回届いたお悩みはこちらです。
最近、父の認知症が進行してきており、現在はまだなんとか自分で生活できていますが、そろそろ介護が必要になってきそうです。
私はフルタイムで働いていて、仕事も責任ある立場になってきたところなので、辞めるわけにはいきません。
父の介護が必要になってきたとき、仕事を続けながら介護をするためにはどのような制度を利用できるのでしょうか。
また、そのほかに何か気をつけておくべきことがあれば教えてください。
( 40代男性 )
近年、高齢化社会の進展に伴い、働きながら親の介護を担う「働く家族介護者(ビジネスケアラー)」が増加しています。
厚生労働省の調査によれば、介護を理由に離職する人は年間約10万人にのぼるとされ、貴重な人材の流出が社会問題となっています。
しかし、介護のために仕事を辞めることは、本人のキャリアや経済状況に大きな影響を与えるだけでなく、社会全体にとっても損失となります。
そこで今回は、仕事と介護を両立していくために活用できる制度やサポートについて、3人の専門家にお話を伺いました。
① 社会保険労務士 佐久間さん(52)の視点:企業内制度を知り、活用する

法律で定められた介護支援制度を理解する
働きながら介護を行うには、まず法律で定められた介護関連の休暇・休業制度を知り、活用することが重要です。
これらは、企業規模にかかわらず、全ての企業で導入が義務付けられている制度です。
介護休業制度
介護休業制度は、要介護状態にある家族を介護するために、一定期間仕事を休むことができる制度です。
対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限として分割して取得することができます。
介護休業中は賃金が支払われない代わりに、雇用保険から「介護休業給付金」として、休業開始時賃金の67%(当初6ヶ月)が支給されます。
相談者様の場合、お父様の介護が必要になった時点で、この制度を利用することができます。
例えば、介護の初期段階で集中的にケアが必要な時期や、ケアプランの作成・見直し時期、介護サービスの利用開始時期などに、分割して取得することも可能です。
介護休暇制度
介護休暇は、要介護状態にある家族の介護や通院の付き添いなどのために、年間5日(対象家族が2人以上の場合は10日)まで、1日単位または時間単位で取得できる制度です。
介護休業と異なり、毎年度の付与となるため、長期間にわたって利用できます。
相談者様は現在お父様お一人の介護を想定されているようですので、年間で5日の介護休暇が取得可能です。
例えば、お父様の通院の付き添いや、ケアマネージャーとの面談など、短時間の用事に柔軟に対応できます。
所定労働時間の短縮等の措置
介護休業とは別に、事業主は以下のいずれかの措置を講じることが義務付けられています。
・所定労働時間の短縮
・フレックスタイム制度
・時差出勤の制度
・介護サービス費用の助成
これらの措置は、介護休業とは別に、利用開始から3年の間で2回以上の利用が可能です。
相談者様の状況によっては、毎日の勤務時間を短くしたり、フレックスタイム制を利用して柔軟な時間管理をしたりすることで、日常的な介護との両立が図りやすくなるでしょう。
制度利用時の注意点と準備
これらの制度を利用する際には、いくつかの注意点と準備が必要です。
まず、制度利用の申請には、対象家族が「要介護状態」にあることを証明する必要があります。
具体的には、要介護認定の結果通知書や医師の診断書などが求められることが多いです。
相談者様のお父様が認知症の症状を示されているとのことですので、まずは介護保険の要介護認定を受けることをお勧めします。
また、制度の利用条件や申請方法は企業によって異なる場合がありますので、事前に自社の就業規則や福利厚生制度を確認しておくことが大切です。
人事部や上司に早めに相談し、スムーズに制度を利用できるよう準備することをお勧めします。
さらに、企業独自の支援制度(介護支援金制度、介護コンシェルジュサービスなど)がある場合もありますので、合わせて確認するとよいでしょう。
② 介護支援専門員(ケアマネージャー) 真柄さん(48)の視点:介護保険サービスの活用

介護保険サービスで働く家族の負担を軽減する
仕事と介護の両立において、介護保険サービスの適切な活用は非常に重要です。
介護保険サービスを上手に利用することで、家族の介護負担を大幅に軽減することができます。
要介護認定の申請から始める
相談者様のお父様の場合、認知症が進行してきているとのことですので、まず介護保険の要介護認定を受けることをお勧めします。
市区町村の介護保険窓口や地域包括支援センターに相談し、申請手続きを進めましょう。
認定結果(要支援1・2または要介護1〜5)によって、利用できるサービスや限度額が決まります。
認知症の方に特に有効なサービス
認知症の方の場合、以下のようなサービスが特に有効です。
- デイサービス(通所介護)
日中、施設で過ごすサービスです。認知症対応型のデイサービスもあり、専門的なケアが受けられます。相談者様が仕事をしている間、お父様の安全を確保し、社会的交流の機会も提供できます。 - ショートステイ(短期入所生活介護)
数日から数週間、施設に短期入所するサービスです。相談者様が出張や泊まりがけの仕事がある場合などに活用できます。定期的に利用することで、相談者様自身の休息時間を確保することも可能です。 - 訪問介護(ホームヘルプサービス)
ヘルパーが自宅を訪問し、身体介護や生活援助を行います。朝の出勤前や夕方の帰宅後に、食事の準備や見守りのために訪問してもらうことで、仕事との両立がしやすくなります。 - 小規模多機能型居宅介護
「通い」「訪問」「泊まり」を組み合わせて利用できる柔軟なサービスです。相談者様の仕事の状況に合わせてサービス内容を調整しやすいのが特徴です。
ケアマネージャーとの協力関係
介護保険サービスを利用する際には、ケアマネージャー(介護支援専門員)と良好な関係を築くことが重要です。
ケアマネージャーは、利用者の状態や家族の状況を踏まえて最適なケアプランを作成し、各種サービスの調整を行います。
相談者様の場合、「仕事と介護の両立」という観点から、以下の点をケアマネージャーに伝えておくことをお勧めします。
・仕事のスケジュール(定時の勤務時間、残業の頻度、出張の有無など)
・介護に割ける時間(平日の朝夕、休日など)
・緊急時の対応方法(連絡先、代わりに対応できる親族や知人など)
これらの情報をもとに、仕事と介護が両立できるケアプランを作成してもらうことが大切です。
定期的に見直しを行い、状況の変化に応じて調整していくことも忘れないでください。
③ 働く介護者支援団体代表 園田さん(55)の視点:働く介護者の心構えとネットワークづくり

私は自身も20年近く親の介護を経験し、現在は同じように仕事と介護を両立する方々を支援する団体を運営しています。
長年の経験から、制度の活用だけでなく、介護者自身の心構えやネットワークづくりも重要だと感じています。
先を見据えた準備の重要性
介護は突然始まるものではなく、徐々に負担が増していくものです。
相談者様のお父様も、現在は「そろそろ介護が必要になってきそう」という段階とのこと。
この時期に準備を始めることは非常に賢明です。
まず、お父様の状態が今後どのように変化していく可能性があるのか、認知症の進行に伴いどのようなケアが必要になるのかを理解しておくことが大切です。
地域の認知症カフェや家族会に参加したり、認知症に関するセミナーに参加したりして、知識を得ておくことをお勧めします。
また、今後のことを考えて、お父様の財産管理や医療・介護に関する意思決定について、元気なうちに話し合っておくことも重要です。
場合によっては、成年後見制度の利用も検討する価値があります。
仕事と介護の境界線を引く 仕事と介護を両立するためには、明確な境界線を引くことが重要です。
「仕事モード」と「介護モード」を切り替える意識を持ち、それぞれに集中できる環境を整えましょう。
例えば、仕事中は緊急時以外は介護に関する連絡を受けない、といったルールを設けることも一つの方法です。
そのためには、緊急時の連絡先や対応方法を事前に決めておき、関係者(ケアマネージャー、デイサービスなど)と共有しておくことが大切です。
また、職場での理解を得るために、上司や同僚に状況を適切に伝えることも重要です。
すべてを開示する必要はありませんが、必要な範囲で状況を説明し、協力を求めることで、急な休みや早退が必要になった時にもスムーズに対応できるようになります。
介護者自身のセルフケア
介護と仕事の両立は、身体的にも精神的にも大きな負担となります。
介護者自身のセルフケアも忘れないでください。
・定期的な休息時間を確保する(ショートステイの利用など)
・趣味や運動の時間を持つ
・同じ立場の人との交流を持つ(介護者の会など)
・必要に応じて専門家(カウンセラーなど)に相談する
介護者が倒れてしまっては元も子もありません。
自分自身の健康管理と心のケアを大切にしてください。
情報収集とネットワークづくり
最後に、情報収集とネットワークづくりの重要性をお伝えしたいと思います。
・地域包括支援センターや市区町村の介護相談窓口を活用する
・介護者の会や認知症カフェなどに参加し、情報交換や気持ちの共有をする
・介護に関するセミナーや勉強会に参加する
・オンラインの介護者コミュニティを活用する
特に「働く介護者の会」のような、同じく仕事と介護を両立している人々のネットワークは、具体的なノウハウや精神的な支えを得る上で非常に有用です。
地域によっては、企業が共同で運営する介護者支援プログラムもありますので、お勧めします。
また、介護に関する情報は日々更新されています。
最新の制度やサービス、テクノロジーなどの情報を常にアップデートすることで、より効率的な介護が可能になります。
まとめ
今回は、仕事と介護の両立に役立つ制度やサポート、心構えについて、3人の専門家の視点からご紹介しました。
法律で定められた介護休業・休暇制度などの企業内制度の活用、介護保険サービスの適切な利用、そして働く介護者としての心構えとネットワークづくりの重要性について、それぞれの専門家から具体的なアドバイスをいただきました。
仕事と介護の両立は決して容易ではありませんが、適切な制度の活用と周囲のサポート、そして何より介護者自身の心構えによって、バランスのとれた生活を送ることは十分に可能です。
介護のために仕事を辞めるという選択をする前に、今回ご紹介した様々な支援策を検討してみてください。
また、介護は予測不可能な要素が多く、状況は常に変化します。
定期的に状況を見直し、必要に応じて支援策を調整していくことも大切です。
相談者様のお父様の状態や相談者様自身の仕事の状況に合わせて、最適な両立の形を見つけていただければと思います。
最後に、介護者支援の社会的な取り組みは年々充実してきています。
最新の情報を得るためにも、地域の相談窓口や支援団体とのつながりを持ち続けることをお勧めします。
おわりに ~まごとも利用のすすめ

今回は、仕事と介護の両立に役立つ制度などについて、3人の専門家・実際の介護経験者の視点からご紹介してきました。
介護支援専門員(ケアマネージャー) の真柄さんは 介護保険サービスの活用をすすめていましたが、場合によっては介護保険外の民間サービスが役に立つこともあります。
ここでは最後に、そういった民間サービスの一例として、大学生が高齢者の自宅に訪問し、楽しい時間を過ごしたり定期的な見守りを行ったりするという画期的なサービスをご紹介します。
京大発ベンチャーが開発したサービス、『まごとも』です。
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『まごとも』は、介護福祉士監修の研修を受けた若者がシニアのもとを訪問し、一緒にお出かけや、スマホやタブレットの支援など介護保険では対応できない日常生活をサポートするサービスです。
『まごとも』では、若者との交流を通して、高齢者に精神面での活力を受け取っていただき、生きる喜びや目的を見出し、積極的に行動を起こせるようになると考えます。
「まごとも」を利用されたシニアの方の中には、車椅子状態で引きこもっていた状態から自主的に歩行トレーニングを始めて、補助器なしで歩けるようになった方もいらっしゃいます。
ご家族からは、「親の日常にハリが出た」「親がポジティブになった」など、嬉しい声を数多く頂戴しています。シニアの皆さまからは、「元気がもらえた」「楽しかった。ありがとう」など心から楽しかったと思える時間を提供しています。
また、業務終了後に笑顔の写真付きのレポートを提供させていただいています。ご家族の皆さまも元気をもらって、安心して、仕事やプライベートに集中できます。
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詳しくは、以下の公式LINEから詳細の情報をご覧ください。
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