今回のお悩み:離れて暮らす高齢の親に、健康で長生きしてもらうために自分にできることを教えてほしい
今回届いたお悩みはこちらです。
私は、もうすぐ70代後半になる両親と離れて暮らしています。
この頃 友人や同僚から「親の介護が大変だ」という話を聞く機会も増えてきて、漠然と「自分の親は健康で長生きしてくれたらいいな」と思っています。
しかし、そう思っているだけで 具体的には何もできていないのが現状です。
両親に健康で長生きしてもらうために 私にできることを教えていただきたいです。
( 40代男性 )
40~50代ぐらいになると、自分の親が年老いていき 介護が必要になったときのことを思って 心配する方は多いようです。
しかし、実際に何か問題が生じ始めないと なかなか予防のために動き始めるというのは難しいもので、今回の相談者さんのように「気にかけてはいるのだが 実際には何も行動を起こせていない」という方は多いと思います。
高齢の親に 健康で長生きしてもらうために子ども世代にできることには何があるのか、今回も3人の専門家・実際の介護経験者をお呼びして それぞれの見解をお聞きしました。
① 高齢者医療専門医 鈴木さん(55)の視点:定期的な現状把握と5つの面からの健康サポート

定期的な親の現状把握と健康生活のサポート方法
高齢の親の健康を支えるためには、まず定期的に親の現状を把握することが重要です。
離れて暮らしていると見えにくい部分も多いですが、電話やビデオ通話などを活用して、定期的に親の様子を確認しましょう。
特に確認すべきポイントとしては、親の健康状態、定期健診・検診の受診状況などが挙げられます。
健診・検診の受診状況は、健康管理の基本となるものです。
特に国民健康保険からの特定健診(メタボ健診)や、各種がん検診などの受診状況を確認してください。「面倒だから」と受診を怠っているケースも少なくありません。
必要に応じて、予約の手伝いや受診の同行をすることも検討しましょう。
また、高齢になるとかかりやすい病気の初期症状についての知識を持っておくことも大切です。
認知症、更年期障害、うつ病などの症状を理解し、親との会話や様子からそれらの兆候がないかを観察することができれば、早期発見・早期治療につながります。
5つの面からの健康生活サポート
高齢者の健康を包括的に支えるためには、以下の5つの面からのアプローチが効果的です。
- 食事
バランスの良い食事は健康の基本です。特に高齢者は栄養不足に陥りやすいため、タンパク質、ビタミン、ミネラルなどの栄養素をしっかり摂取できているか確認しましょう。一人暮らしの場合、「作るのが面倒」という理由で食事が簡素化しがちです。配食サービスの利用や、簡単に栄養が摂れる食品の紹介なども有効です。 - 運動
適度な運動は、筋力維持や認知症予防にも効果があります。ウォーキングなどの有酸素運動や、スクワットなどの簡単な筋トレを日常生活に取り入れられるようアドバイスしましょう。地域の高齢者向け体操教室などの情報提供も有効です。 - 嗜好品(喫煙・飲酒)
喫煙は様々な疾患のリスクを高めるため、できれば禁煙を勧めましょう。飲酒については適量であれば問題ありませんが、「晩酌が習慣になっている」という場合は、量や頻度が増えていないか注意が必要です。 - 睡眠
質の良い睡眠は健康維持に欠かせません。特に高齢になると睡眠障害が増えるため、就寝前のルーティン(入浴、読書など)を作るよう助言するのも良いでしょう。 - 社会参加
働きすぎは避けるべきですが、適度な社会参加は精神的健康に重要です。地域のボランティア活動や趣味のサークルなど、親の興味に合った活動を探す手伝いをしましょう。
これらの5つの面から親の生活習慣を見直し、必要に応じてサポートすることで、健康寿命の延伸に貢献できるはずです。
② 10年間親の介護をしてきた経験者 山田さん(63)の視点:精神的健康の重要性

精神的健康が身体的健康を支える
私は10年以上にわたり両親の介護を経験してきましたが、その中で強く感じたのは精神的な健康の重要性です。
どれだけ身体的に健康で自立した生活を送れていたとしても、精神的に不健康な状態では、やがて身体面にも悪影響が出てくることが多いのです。
私の父は80歳を過ぎてから徐々に足腰が弱くなり、外出頻度が減りました。
それに伴って趣味だった庭いじりもしなくなり、テレビを見る時間が増えていきました。
そして次第に意欲の低下、食欲不振、睡眠障害などが現れ、結果的に身体機能も急速に低下していきました。
一方、母は認知症の診断を受けた後も、デイサービスの俳句の会に参加したり、近所の友人と週に一度お茶を飲む習慣を続けたりしていました。
その結果、認知症の進行は緩やかで、身体機能も比較的長く維持することができました。
日常に喜びと刺激を取り入れる
この経験から、高齢の親に健康で長生きしてもらうためには、日常生活に「楽しさ」や「刺激」を残しておくことが非常に重要だと感じています。
具体的には、以下のようなことが効果的でした。
- 趣味を持つことの奨励
新しい趣味を始めるのは難しいかもしれませんが、昔から好きだったことを続けられるよう環境を整えることが大切です。例えば、読書が好きな親には定期的に本を贈る、音楽が好きな親には簡単に操作できる音楽プレーヤーを用意するなど、小さなサポートが大きな違いを生みます。 - 人との交流の機会を作る
友人や知人との定期的な交流は、精神的な健康に大きく貢献します。地域のサークル活動や老人会などの情報を提供したり、時には一緒に参加してみるのも良いでしょう。親の社交性に合わせた交流の場を見つけることが大切です。 - 小さな目標や楽しみを設定する
「来月の孫の運動会に行く」「春になったら温泉旅行に行く」など、未来に向けた小さな目標や楽しみがあると、日々の生活にハリが出ます。子どもとして親に会いに行く予定を早めに伝えておくことも、親にとっての「楽しみ」になります。 - 役割を持ってもらう
「誰かの役に立っている」という実感は、高齢者の自己肯定感を高めます。例えば、料理が得意な親には家族の集まりで一品作ってもらう、植物が好きな親には植木の世話を頼むなど、可能な範囲で役割を持ってもらうことも大切です。
これらの取り組みを通じて、生活にワクワク感やモチベーションが生まれると、自然と体を動かすことも増え、結果的に身体的な健康状態も良くなることが多いのです。
遠方に住んでいても、電話やビデオ通話、時折の訪問を通じて、親の精神的な健康をサポートすることは十分可能です。
③ 健康科学研究者 井上さん(48)の視点:新しい健康概念「ポジティブヘルス」の視点から

「健康」の概念を広げる―ポジティブヘルスの考え方
相談者さんは「親に健康で長生きしてほしい」と願っていますが、そもそも「健康」とはどのような状態を指すのでしょうか。
従来、健康は「病気や障害がない状態」と定義されることが多かったのですが、現代では多くの高齢者が何らかの慢性疾患を抱えて生活しています。
そのような状況の中で、新しい健康の概念として注目されているのが、2011年にオランダの家庭医マフトルド・ヒューバーが提唱した「ポジティブヘルス(Positive Health)」です。
ポジティブヘルスでは、健康を「社会的、身体的、感情的な問題に直面したときに適応し、本人主導で管理すること」と捉えます。
つまり、病気があってもなくても、その人自身が今の状態を理解し、エネルギーを持って生きていくことができれば、その人は「健康」だという考え方です。
この概念は、特に高齢者の健康を考える上で非常に有用です。
「クモの巣」チャートで親の健康状態を可視化する
ポジティブヘルスの実践ツールとして、ヒューバーは「クモの巣」と呼ばれるレーダーチャートを考案しました。
これは以下の6つの指標から構成されています。
- 身体の状態(痛みや不調がどの程度あるか、体力はどうか等)
- 心の状態(ストレスや不安、落ち込みなどの精神状態)
- いきがい(人生の目的や意味、将来への希望など)
- 暮らしの質(生活環境や経済状況など)
- 社会とのつながり(人間関係や社会参加の状況)
- 日常機能(日常生活を送る上での自立度や能力)
このチャートを使って親の現状を可視化すると、「このあたりが強み」「ここをもう少し良くしたい」というように、具体的な支援ポイントが見えてきます。
すべての面で完璧を目指す必要はなく、本人が重視する面を中心に、できることから少しずつ改善していくことが大切です。
病院や医療機関を利用したり、薬を飲んだりするだけでは健康は作れません。
社会や地域とつながり、仲間と一緒に過ごす中で自己肯定感を高め、毎日を充実させながら少しずつ前向きな行動ができることが、真の意味での健康につながります。
親のポジティブヘルスを支えるためのアプローチ
具体的には、以下のようなアプローチが効果的です。
- 親の「強み」に注目する
体の不調ばかりに目を向けるのではなく、「料理が上手」「人付き合いが得意」など、親の強みや長所に注目し、それを伸ばせるような環境づくりを手伝いましょう。 - 自己決定を尊重する
「こうしたほうがいい」と子どもが決めるのではなく、親自身が選択し、決定できる機会を大切にしましょう。自己決定感は生きる意欲につながります。 - 新しい目標設定をサポートする
「あれができなくなった」と過去を懐かしむのではなく、今の状態でも楽しめる新しい趣味や活動を一緒に探してみましょう。新しい可能性に目を向けることで、前向きな気持ちが生まれます。 - 多様なつながりを支援する
家族だけでなく、友人、知人、ご近所さん、さらには趣味のグループや社会活動などを通じた多様なつながりをサポートしましょう。異なる世代との交流も視野に入れると良いでしょう。
ポジティブヘルスの視点から親の健康を考えることで、たとえ病気があっても、自分らしく生き生きと暮らせる可能性が広がります。
相談者さんも、「病気のない状態」にこだわるのではなく、親がどのような生活を望み、何に喜びを感じるかに目を向けてみてはいかがでしょうか。
まとめ
今回は、離れて暮らす高齢の親の健康を支えるための方法について、3人の専門家・介護経験者の視点からご紹介しました。
親の現状を定期的に把握し、食事・運動・嗜好品・睡眠・社会参加という5つの面からサポートすること、精神的な健康を維持するために日常に楽しみや刺激を取り入れること、そして新しい健康概念「ポジティブヘルス」の視点から親の強みや自己決定を尊重することの重要性について、それぞれの専門家から具体的なアドバイスをいただきました。
これらの知見からわかるのは、高齢の親の健康を支えるためには、単に医療的なケアだけでなく、精神面や社会面も含めた総合的なアプローチが重要だということです。
離れて暮らしていても、定期的なコミュニケーションを通じて親の状況を把握し、必要なサポートを提供することは十分可能です。
最も大切なのは、親自身が「生きる喜び」や「日々の楽しみ」を持ち続けられるような環境づくりをサポートすることではないでしょうか。
それが結果的に、親の健康寿命の延伸につながるものと思われます。
相談者さんも、今回ご紹介した方法を参考に、できることから少しずつ始めてみてください。
親の健康を気にかけ、行動を起こそうとする気持ちそのものが、親にとって大きな支えになることでしょう。
おわりに ~まごとも利用のすすめ

今回は、子どもが高齢の親の健康のためにできることを、3人の専門家・実際の介護経験者の視点から解説してきました。
家族介護経験者の山田さんは 精神的健康の重要性を指摘したうえで、精神的健康を維持する手段の一つとして「人との交流」を挙げていました。
ここでは 最後に、高齢の親に人と交流する機会を持って 精神的健康を維持してもらうために使える方法のぐたい例の一つとして、大学生が高齢者の自宅に訪問し、楽しい時間を過ごしたり定期的な見守りを行ったりするという京大発ベンチャーが開発したサービス、『まごとも』をご紹介します。
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『まごとも』は、介護福祉士監修の研修を受けた若者がシニアのもとを訪問し、一緒にお出かけや、スマホやタブレットの支援など介護保険では対応できない日常生活をサポートするサービスです。
『まごとも』では、若者との交流を通して、高齢者に精神面での活力を受け取っていただき、生きる喜びや目的を見出し、積極的に行動を起こせるようになると考えます。
「まごとも」を利用されたシニアの方の中には、車椅子状態で引きこもっていた状態から自主的に歩行トレーニングを始めて、補助器なしで歩けるようになった方もいらっしゃいます。
ご家族からは、「親の日常にハリが出た」「親がポジティブになった」など、嬉しい声を数多く頂戴しています。シニアの皆さまからは、「元気がもらえた」「楽しかった。ありがとう」など心から楽しかったと思える時間を提供しています。
また、業務終了後に笑顔の写真付きのレポートを提供させていただいています。ご家族の皆さまも元気をもらって、安心して、仕事やプライベートに集中できます。
「まごとも」によって、介護によるストレスを減らして、すぐに始めることができる親孝行をしてみませんか?
詳しくは、以下の公式LINEから詳細の情報をご覧ください。
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