今回のお悩み:高齢の親が一人暮らしを始める際に 気をつけたほうがいいことなどを教えてほしい

今回届いたお悩みはこちらです。

今年の3月初旬に父が亡くなりました。
葬儀や各種手続きを終え いろいろなことがひと段落して、気持ちの整理をつけようとしているところなのですが、70代前半の母が一人暮らしになってしまうことが気がかりです。
高齢者が一人暮らしをするにあたっての考えられるリスクや それに対する対策、家族として私にできることは何があるのか教えていただきたいです。
また、もちろん個人差があるとは思うのですが、高齢者にいつまでも一人暮らしをさせてしまっていていいのか、どこかで区切りをつけるべきなのかというところについても 専門家の意見をお聞きしたいです。
よろしくお願いいたします。
( 40代女性 )

近年、少子高齢化などにより、一人暮らしの高齢者が増加しています。
一人暮らしをする65歳以上の高齢世帯の割合は このまま増え続け、2050年には20%を超えるとする 国立社会保障・人口問題研究所による見通しも発表されています。
おそらく、今回の相談者さんのように、高齢の親が一人暮らしをしていて心配している、自分にできることや気を付けたほうがいいことを知りたいという方は多いのではないでしょうか。
そこで、高齢者の一人暮らしのリスク・見守り・支援策などについて、今回も3人の専門家をお呼びして それぞれの見解をお聞きしました。

① 高齢者介護専門コーディネーター 東口さん(54)の視点:高齢者の一人暮らしに潜むリスク

高齢者の一人暮らしに伴うリスクを正しく理解する

高齢の親が一人暮らしを始める際、まず大切なのは、どのようなリスクがあるのかを家族がしっかりと理解することです。
高齢者の一人暮らしには、以下のようなリスクが考えられます。

社会的孤立と精神面への影響

高齢者が一人暮らしをする最も大きなリスクの一つが「社会的孤立」です。
特に配偶者を亡くした直後は、それまで共に過ごしてきた大切な人がいなくなることによる喪失感から、生きがいを感じられなくなったり、寂しさを強く感じたりすることがあります。
また、他者との交流機会が減ることによって、認知機能の低下リスクも高まります。
会話や社会的なやりとりは脳に刺激を与え、認知機能の維持に重要な役割を果たしています。
交流が減ることで、この刺激が減少してしまうのです。

身体面への影響

一人暮らしをしていると、「フレイル(虚弱)」が進行しやすくなります。
フレイルとは、加齢に伴い心身の予備能力が低下した状態で、要介護状態の前段階と考えられています。
一人だと活動量が低下しがちで、また「誰かに見られている」という意識も薄れるため、知らず知らずのうちに体の衰えが進んでしまうことがあるのです。

また、食生活が偏りがちになるという問題もあります。
「一人分をわざわざ作るのが面倒」「誰かと一緒に食べる楽しみがない」といった理由から、簡単な食事で済ませたり、同じものばかり食べたりしがちです。
その結果、栄養バランスが崩れ、体力や免疫力の低下につながることもあります。

生活面でのリスク

生活面では、まず経済的な負担の増加が挙げられます。
光熱費などの固定費は二人以上で暮らす場合より割高になりますし、一人分の食材を購入するとなると、単価も高くなりがちです。
また、掃除や洗濯といった身近な家事に少しずつ手が回らなくなることもあります。
体力の低下や意欲の減退によって、日々の生活環境が徐々に悪化していくことがあるのです。

健康・安全面のリスク

病気やケガ、あるいは認知症初期の症状などの発見が遅れやすくなるのも一人暮らしの大きなリスクです。
同居者がいれば気づくような小さな変化も、一人だと見過ごされがちです。
特に認知症は本人の自覚がないまま進行することも多く、発見が遅れると対応も難しくなります。

最も深刻なのは「孤独死」のリスクです。
急病や事故で倒れても誰にも気づかれず、発見が遅れてしまう可能性があります。
これは本人だけでなく、家族にとっても大きな不安材料となるでしょう。

また、犯罪や消費者トラブルに巻き込まれるリスクも高まります。
特殊詐欺や悪質な訪問販売などのターゲットとして、一人暮らしの高齢者が狙われやすいという現実があります。

さらに、お金の管理に不安が残るケースも少なくありません。
特に認知機能が低下してくると、通帳や現金の管理、支払いなどが困難になることがあります。

以上のようなリスクを把握したうえで、対策を考えていくことが重要です。
リスクを知ることは不安を増幅させるためではなく、適切な準備と対応のためであることを心に留めておきましょう。

② 高齢者見守りサービス事業者 田所さん(49)の視点:様々な見守り・支援策

高齢者の一人暮らしを支える多様なサービスと支援策

高齢の親御さんが一人暮らしをする場合、前述のようなリスクに対応するための様々な支援策があります。
家族としてできることと、外部のサービスを上手に組み合わせることで、より安心な環境を整えることができるでしょう。

行政による見守りサービスの活用

まず検討していただきたいのが、各自治体が提供している見守りサービスです。
多くの自治体では、独居高齢者のための安否確認サービスや、定期的な訪問サービスを実施しています。
地域包括支援センターや社会福祉協議会に相談することで、お住まいの地域で利用できるサービスを紹介してもらえます。

こうした公的サービスは無料または低料金で利用できることが多く、定期的に専門職が訪問することで、健康状態の確認や生活上の困りごとの早期発見につながります。
また、地域によっては配食サービスと安否確認を組み合わせたサービスもあり、栄養バランスの取れた食事の提供と同時に、安否確認も行ってくれます。

民間の見守りサービスの利用

公的サービスだけでは十分でない場合は、民間の見守りサービスも選択肢に入れましょう。
例えば、以下のようなサービスがあります。

  1. 緊急通報システム
    ボタン一つで警備会社や家族に通報できるシステムです。体調不良や転倒などの緊急時に、素早く対応できます。最近では、ペンダント型やブレスレット型など、身につけやすいタイプも増えています。
  2. センサー型見守りシステム
    電気やガス、水道の使用状況をモニタリングし、普段と異なる状況があれば家族に通知するシステムです。本人が積極的に何かをする必要がなく、自然な生活の中で見守りができる点が特徴です。
  3. スマートスピーカーを活用した見守り
    「アレクサ」や「Google Home」などのスマートスピーカーを活用し、リマインダー機能で服薬管理を行ったり、家族と簡単に通話したりすることができます。操作も声だけで行えるため、高齢者でも比較的使いやすいでしょう。

社会参加の促進と家族のサポート

見守りサービスとともに重要なのが、お母様の社会参加を促すことです。
仕事やボランティア活動、趣味のサークルなど、外出する機会を定期的に持つことは、心身の健康維持に非常に効果的です。

地域のコミュニティ活動への参加も検討してみてください。
老人会や町内会のイベント、公民館での講座など、同世代と交流できる場は多くあります。
最初は家族が一緒に参加したり、送迎をサポートしたりすることで、参加のハードルを下げることができるでしょう。

家族としてのコミュニケーションと健康管理

遠方に住んでいる場合でも、定期的な電話やビデオ通話で連絡を取ることが大切です。
決まった曜日や時間に連絡を取る習慣をつけると、お互いに安心感が生まれます。
また、連絡が取れない場合に備えて、近隣に住む親戚や信頼できる知人に時々様子を見てもらうよう依頼しておくこともお勧めします。

健康管理面では、定期健診の予約や受診の同行、お薬の管理サポートなどができるとよいでしょう。
また、最近は遠隔で健康データを共有できるアプリやデバイスも増えています。
血圧計や体重計のデータを家族と共有できるシステムを導入すれば、健康状態の変化にも気づきやすくなります。

住環境の整備

転倒予防のために、自宅内の段差解消や手すりの設置など、住環境の整備も重要です。
介護保険の住宅改修費支給制度を利用すれば、一部費用の補助を受けることも可能です。
また、電磁調理器(IHクッキングヒーター)への切り替えや自動消火機能付きの器具の導入など、火の不始末による事故を防ぐ工夫も検討してみてください。

これらの支援策を組み合わせることで、お母様の一人暮らしを様々な面からサポートすることができます。ただし、母親の自立心や尊厳を尊重し、過度な干渉にならないよう配慮することも大切です。

③ 高齢者住宅コンサルタント 奥田さん(58)の視点:一人暮らしに区切りをつけるタイミングと選択肢

一人暮らしの限界を見極めるサイン

高齢者がいつまで一人暮らしを続けられるかは、個人差が大きく、一概には言えません。
しかし、以下のようなサインが見られるようになったときは、一人暮らしの限界が近づいているかもしれないと考えるタイミングかもしれません。

認知症の症状が現れ始めたとき

物忘れが増えたり、同じことを何度も質問したりするようになった場合は注意が必要です。
特に、火の消し忘れ、服薬管理ができなくなる、金銭管理に混乱が見られるなどの症状は、一人暮らしの安全に関わる重大なサインです。

身体機能の低下が顕著になったとき

入院をきっかけに急激に体力が落ちた、歩行に杖や歩行器が必要になった、頻繁に転倒するようになったなどの場合、一人での生活に危険が伴うことがあります。
特に階段の上り下りや入浴などの動作が困難になると、事故のリスクが高まります。

日常生活の管理が難しくなったとき

食事の準備が億劫になり、栄養が偏っている、掃除や洗濯がおろそかになり衛生状態が悪化している、光熱費や家賃の支払いを忘れるなど、生活管理面での問題が出てきたときも注意が必要です。

社会的な意欲の低下が見られるとき

外出の機会が減り、閉じこもりがちになる、趣味や楽しみを感じなくなる、電話に出なくなるなど、社会との接点を自ら減らしていく様子が見られる場合も要注意です。

厚生労働省の資料によると、令和元年時点での健康寿命は男性が72.68歳、女性は75.38歳となっています。
健康寿命とは「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」を示したもので、これも一人暮らしの限界を考える一つの目安になるかもしれません。

一人暮らしに区切りをつけた後の選択肢

一人暮らしが難しくなった場合の選択肢として、まず思い浮かぶのは「家族との同居」でしょう。
しかし、介護や見守りを目的とした同居は、介護する側もされる側も双方にとって大きな負担となる可能性があります。
家族関係の悪化を招くケースも少なくないため、慎重な検討が必要です。

同居以外にも、高齢者の状況に応じた様々な住まいの選択肢があります。

認知症がある場合

認知症の症状がある場合は、専門的なケアが受けられる「グループホーム」や、手厚い介護体制がある「介護付き有料老人ホーム」が適しています。
グループホームは少人数の家庭的な環境で、認知症ケアの専門家によるサポートが受けられます。
介護付き有料老人ホームは24時間体制で介護職員が常駐しており、安全面での配慮が充実しています。

身体機能の低下がある場合

杖や歩行器を使用するなど、歩行に不安がある場合は、バリアフリー設計の「介護付き有料老人ホーム」や「住宅型有料老人ホーム」が選択肢になります。
これらの施設は段差がなく、手すりが設置され、緊急時のコールシステムも整っているため、身体機能が低下しても安全に生活できる環境が整っています。

将来に備えて早めの住み替えを検討する場合

現在は自力での生活に大きな支障はないが、将来に備えて安心できる住まいに移りたい場合は、「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」や「シニア向け分譲マンション」が適しています。
これらは自立した生活を前提としながらも、緊急時の対応や生活相談などのサービスが利用できる点が特徴です。

各施設の特徴とコスト 施設選びにおいては、提供されるサービスの内容だけでなく、費用面も重要なポイントです。

  1. グループホーム
    入居一時金は一般的になく、月額費用は15万円前後が多いですが、介護保険の自己負担分を含みます。認知症の方のためのケアに特化していますが、入居待ちの場合も多いです。
  2. 介護付き有料老人ホーム
    入居一時金が0円〜数千万円と幅広く、月額費用も10万円台〜30万円台と施設によって大きく異なります。24時間の介護体制が整っている反面、コストが高めという特徴があります。
  3. 住宅型有料老人ホーム
    入居一時金は比較的低めか不要の場合が多く、月額費用は10万円台が中心です。必要に応じて外部の介護サービスを利用する形となります。
  4. サービス付き高齢者向け住宅
    入居一時金は施設により様々で、月額費用は10万円前後が多いです。生活相談や安否確認などの基本的なサービスがついている一方、介護が必要になった場合は外部サービスを利用することになります。

施設選びのポイント

どの選択肢が最適かは、お母様の健康状態や希望、経済状況などを総合的に判断する必要があります。
施設を検討する際は、実際に見学に行き、雰囲気や職員の対応、入居者の様子などを確認することをお勧めします。
また、契約内容や退去条件なども事前によく確認しておくことが大切です。

一人暮らしに区切りをつけるという決断は、本人にとっても家族にとっても大きな決断です。
早すぎる判断は本人の自立心や尊厳を損なう可能性がある一方、遅すぎると安全面でのリスクが高まります。
日頃からオープンなコミュニケーションを心がけ、本人の意向を尊重しながら、適切なタイミングでの決断ができるとよいでしょう。

まとめ

今回は、高齢者の一人暮らしに関するリスクと対策、そして一人暮らしに区切りをつけるタイミングについて、3人の専門家の視点からご紹介しました。
高齢の親が一人暮らしをする場合、社会的孤立や健康面、安全面など様々なリスクがあることを理解した上で、行政や民間のサービスを活用した見守り体制の構築、社会参加の促進、家族としてのコミュニケーションや健康管理のサポートなど、多角的なアプローチが重要です。

また、一人暮らしを続けることが難しくなったサインを見逃さず、適切なタイミングで次の住まいを検討することも大切です。
グループホームや有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅など、様々な選択肢の中から、本人の状態や希望に合った環境を選ぶことができます。

どのような選択をするにしても、高齢者本人の意思を尊重し、自己決定を支援する姿勢が重要です。
また、家族がすべてを抱え込むのではなく、専門家や地域の支援を上手に活用しながら、高齢の親の安心と尊厳を守る体制を整えていくことをお勧めします。

最後に、高齢者の一人暮らしはリスクだけでなく、自立心や生きがいの維持という大きなメリットもあります。
リスクを最小限に抑えながら、できる限り本人が望む生活を続けられるよう、バランスのとれたサポートを心がけていただければと思います。

おわりに ~まごとも利用のすすめ

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今回は、高齢者の一人暮らしのリスクや対策、限界などについて、3人の専門家の視点から解説してきました。
高齢者見守りサービス事業者の中村さんは、見守りサービスなどを有効に活用することを勧めていましたが、最後に、大学生が高齢者の自宅に訪問することで、一人暮らしの高齢者の様子を定期的に見守りつつ、日常への刺激や人とコミュニケーションする機会を提供してくれる京大発ベンチャーが開発したサービス、『まごとも』をご紹介します。

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『まごとも』は、介護福祉士監修の研修を受けた若者がシニアのもとを訪問し、一緒にお出かけや、スマホやタブレットの支援など介護保険では対応できない日常生活をサポートするサービスです。

『まごとも』では、若者との交流を通して、高齢者に精神面での活力を受け取っていただき、生きる喜びや目的を見出し、積極的に行動を起こせるようになると考えます。
「まごとも」を利用されたシニアの方の中には、車椅子状態で引きこもっていた状態から自主的に歩行トレーニングを始めて、補助器なしで歩けるようになった方もいらっしゃいます。

ご家族からは、「親の日常にハリが出た」「親がポジティブになった」など、嬉しい声を数多く頂戴しています。シニアの皆さまからは、「元気がもらえた」「楽しかった。ありがとう」など心から楽しかったと思える時間を提供しています。

また、業務終了後に笑顔の写真付きのレポートを提供させていただいています。ご家族の皆さまも元気をもらって、安心して、仕事やプライベートに集中できます。

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詳しくは、以下の公式LINEから詳細の情報をご覧ください。

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