今回のお悩み:一人で介護する大変さからうつ病のような状態になってしまい、どうしたらいいか知りたい
最近、母が脳梗塞で倒れ、退院後は介護が必要な状態になりました。一人っ子の私には兄弟姉妹がおらず、介護の負担がすべて私一人にかかっています。仕事と介護の両立に毎日追われ、睡眠不足と疲労で心身ともに限界を感じています。介護の仕方も手探り状態で、正しいケアができているか不安です。最近は気分が落ち込み、朝起きるのも辛く、食欲もなく、何も楽しいと感じられなくなってきました。これがうつ状態なのかと心配しています。一人で抱え込むしかない状況に孤独感も強く、誰にも相談できずにいます。どうすれば自分の心を保ちながら、親の介護を続けていけるでしょうか。
一人っ子の家族介護者にとって、親の介護は兄弟姉妹と分担することができないため、肉体的にも精神的にも大きな負担となります。今回は、一人で親の介護を担う方のために、3人の専門家から具体的なアドバイスをいただきました。
① 介護支援専門員 鈴木さん(45)の視点:介護保険サービスの活用

一人で抱え込まない、プロの力を借りる勇気を持とう
一人っ子の方が親の介護を一人で抱え込むと、心身の健康を損なうリスクが高まります。
私が担当してきた方々の中にも、一人っ子の方で「自分がやらなければ誰もいない」という使命感から限界まで頑張りすぎて、結果的に倒れてしまい、かえって親御さんが困ってしまうケースを何度も見てきました。
まず最初に行ってほしいのが、地域の包括支援センターへの相談です。
介護は始まってから、約10年間も続くと言われています。その期間を一人で賄い切るには、金銭的にも精神的にもかなり大きな負担となります。
センターでは介護保険サービスの利用方法を案内し、ケアマネジャーを紹介してくれます。
ケアマネジャーは介護保険サービスを組み合わせて、あなたと母親に最適なケアプランを作成してくれます。
特に脳梗塞の場合は、退院直後から適切なリハビリを続けることで、回復の可能性が大きく変わってきます。
早めの相談が回復の鍵となるのです。
介護保険サービスで負担を軽減する具体的な方法
デイサービス・ショートステイの活用
母親が日中数時間、または数日間施設で過ごせるサービスです。
この間、あなたは仕事に集中したり、自分の時間を持つことができます。
デイサービスでは、他の利用者との交流も生まれ、母親の認知機能維持にも効果があります。
また、専門スタッフによるリハビリテーションも受けられるので、自宅では難しい機能訓練も可能です。
私の経験では、最初は「他人に任せるのは申し訳ない」と抵抗感を示される方が多いのですが、実際に利用し始めると、母親自身も「同じ境遇の人と話せて楽しい」「家で二人きりよりも刺激がある」という感想をいただくことが多いです。
週2~3回の利用から始めて、徐々に回数を増やしていくといいでしょう。
訪問介護サービス(ヘルパー)の導入
入浴や排泄など身体的に負担の大きいケアを専門のヘルパーに任せることで、あなたの体力的負担を減らせます。
特に仕事をしながらの介護では、ヘルパーの活用は必須といえるでしょう。訪問入浴サービスも検討してみてください。
脳梗塞の場合、麻痺が残っていると入浴介助は特に大変です。
無理をして腰を痛めてしまうと、あなた自身も介護が困難になってしまいます。
プロのヘルパーは安全な介助方法を熟知していますので、最初は見学して技術を学ぶという使い方もできます。
また、母親の状態に変化があった時も、ヘルパーさんが気づいて専門家に繋げてくれることも多く、早期発見の目としても役立ちます。
福祉用具のレンタル・購入と住宅改修
ベッド、車いす、ポータブルトイレなどの福祉用具を利用することで、介護の負担を軽減できます。
また、手すりの設置や段差の解消など、住宅改修の補助金制度も活用しましょう。
これらは長期的に見れば介護の質の向上と、あなたの身体的負担の軽減につながります。
脳梗塞後は特に転倒リスクが高まりますので、環境整備は重要です。
住宅改修は一度に全部行う必要はなく、よく使う場所から優先的に改修していくといいでしょう。
例えば、トイレ、お風呂場、寝室から順に手すりをつけていくなど、計画的に進めることをお勧めします。
福祉用具専門相談員に自宅を見てもらい、最適な用具を選ぶことも大切です。
② 精神科医 佐藤さん(52)の視点:介護うつを予防するセルフケア

うつ症状を見逃さないために
ご相談の内容から、すでに介護うつの初期症状が出ている可能性があります。
「朝起きるのがつらい」「食欲がない」「楽しいと感じられない」などの症状が2週間以上続いているなら、専門家への相談を強くお勧めします。
介護うつは、一般的なうつ病よりも見過ごされやすい特徴があります。
「疲れているだけ」「しばらくすれば良くなる」と自分を励ましながら悪化させてしまうケースが多いのです。
特に一人っ子の方は、「自分がダメになったら母親はどうなるのか」という責任感から、自分の心身の不調を無視しがちです。
私のもとに来られる介護者の方々は、すでに重度のうつ状態になってからが多く、「もっと早く来ればよかった」と言われます。うつ症状は早期発見・早期治療が非常に重要です。
身体の病気と同じように、精神の不調も早めに対処すれば回復も早いのです。
介護うつを予防する3つのセルフケア
自分の時間を確保する
たとえ短時間でも、自分だけの時間を定期的に持ちましょう。
毎日最低30分は自分のための時間を確保し、週に一度は半日以上のまとまった休息時間を作ることを意識してください。
介護保険サービスを利用して、自分時間を確保することを躊躇わないでください。
「介護者のレスパイト(休息)」は、医学的にも重要性が認められています。
私の患者さんの例では、週に1回だけでも「完全に自分のための時間」を持つことで、精神状態が大きく改善されたケースが数多くあります。
この時間は「贅沢」ではなく「治療的」なもので、介護の継続には絶対に必要なものと考えてください。
趣味や友人との交流など、介護とまったく関係のない活動を取り入れることが特に効果的です。
その間の介護は、ショートステイなどのサービスを利用して専門家に任せましょう。
最初は罪悪感を感じるかもしれませんが、これは「母親のため」でもあるのです。
心身の健康を意識する
十分な睡眠、バランスの良い食事、軽い運動を心がけましょう。
睡眠は特に重要です。食事は配食サービスなども活用し、手軽に栄養を摂取できるよう工夫しましょう。
ストレスを感じたときには、呼吸法や段階的筋弛緩法などの簡単なリラクゼーション技術を活用してください。
睡眠不足が続くと、うつ症状が悪化する一因となります。
夜間の介護で睡眠が分断されるようであれば、夜間のヘルパー派遣や短期間のショートステイを検討することも大切です。
また、15分程度の短い昼寝も脳の回復に効果があります。
栄養面では、特にビタミンB群、マグネシウム、オメガ3脂肪酸などが不足すると、うつ症状につながりやすいことがわかっています。
毎食バランスよく食べるのが難しければ、サプリメントの活用も検討してみてください。
同じ経験を持つ人とつながる
家族介護者の会などのサポートグループに参加することで、孤独感が和らぎます。
「家族の会」や「介護者カフェ」、オンラインコミュニティなどで、同じ境遇の方との交流を持ちましょう。「自分だけではない」という実感は、精神的な負担を大きく軽減します。
臨床的な観察では、サポートグループに参加している介護者は、孤立している介護者に比べてうつ病の発症率が低いという結果が出ています。
特に一人っ子の方は「誰にも理解してもらえない」という孤独感を抱きやすいですが、同じ状況の方との交流は大きな支えになります。
オンラインの介護者コミュニティも増えていますので、外出が難しい場合はそうしたツールも活用してください。同じ悩みを共有し、解決策を話し合うことで、精神的な負担が軽減されるだけでなく、実践的なアドバイスも得られるでしょう。
③ 社会福祉士 田中さん(40)の視点:公的支援制度と地域資源の活用

知らないと損する支援制度
介護休業制度と介護休暇制度
会社員の方は、最大93日間の介護休業が取得でき、休業前の賃金の67%が給付金として支給されます。
また、年間5日(対象家族が2人以上の場合は10日)の介護休暇も取得可能です。
会社によっては独自の上乗せ制度もあるので、人事部に確認してみましょう。
この制度は「使いにくい」と思われがちですが、実際に制度を利用した方の多くは「もっと早く使えばよかった」と言われます。
特に脳梗塞の場合、退院直後は状態が不安定で、集中的なケアが必要な時期です。この時期に介護休業を取得することで、適切なケア体制を整える時間が確保できます。
制度利用の際は、主治医から「介護休業制度等の申出のための医師の証明書」を発行してもらい、会社に提出する流れになります。会社によっては独自の書式があるので、事前に確認しておくといいでしょう。
利用を検討する際は、地域の社会保険労務士や産業カウンセラーに相談するのも一つの方法です。
介護と仕事の両立支援制度
時短勤務、フレックスタイム制、テレワークなど、介護と仕事を両立しやすい働き方を検討してください。
現在の職場での両立が難しい場合は、キャリアカウンセラーに相談し、介護と両立しやすい職場への転職も選択肢に入れましょう。
実際に私のクライアントで、介護のために正社員から契約社員に切り替えたり、在宅勤務が可能な企業に転職したりして、介護と仕事の両立を実現された方がいらっしゃいます。
特に一人っ子の場合、長期的な介護を視野に入れると、働き方の見直しは重要なポイントです。
最近では「介護離職ゼロ」を掲げる企業も増えており、介護と仕事の両立支援に積極的な会社も多くなっています。
厚生労働省の「両立支援等助成金」など、企業が制度を整備するための支援もありますので、会社の担当者に伝えてみるのも一つの方法です。
地域の見守りサービスと緊急通報システム
緊急通報システムやIoT技術を活用した見守りサービスを利用することも、あなたの不安を軽減につながります。
経済的負担を減らすための高額介護サービス費制度や税制面での医療費控除、障害者控除なども積極的に活用しましょう。
特に一人っ子の方は「仕事中に何かあったらどうしよう」という不安を抱えがちです。
緊急通報システムは、ボタン一つで協力者や警備会社に連絡できるため、その不安を軽減するのに役立ちます。
最近では、センサーで親の動きを検知し、普段と異なる行動があれば通知してくれるシステムもあります。
また、「高額介護サービス費制度」は意外と知られていませんが、1か月の介護費用の自己負担額が一定額を超えた場合、超えた分が払い戻される制度です。
医療費と介護費用を合算して一定額を超えた場合に還付を受けられる「高額医療・高額介護合算制度」も活用できます。
経済的な負担を減らすことで、より充実したサービスを利用することが可能になります。
地域資源を上手に活用する
介護講座
病院や施設が開催する介護教室に参加し、正しい介護技術を学びましょう。
オンラインでの介護講座も活用すれば、時間や場所を選ばず学べます。
脳梗塞後のリハビリ支援方法など、専門的な知識を得ることで安全で効率的な介護が可能になります。
介護技術を習得することは、あなたの身体的負担を減らすだけでなく、母親の回復を促進することにもつながります。
例えば、脳梗塞後の片麻痺がある場合、適切な移乗方法を知っているかどうかで、腰痛のリスクが大きく変わってきます。
専門家から直接指導を受けることで、自信を持って介護ができるようになります。
また、病院や自治体が開催するリハビリ教室では、自宅でできる簡単なリハビリ方法も教えてくれます。
毎日少しずつでも適切なリハビリを継続することで、母親の機能回復につながる可能性が高まります。
配食サービスの利用
母親の状態に合わせた食事を選べる配食サービスを活用すれば、あなた自身の食事管理の負担も軽減されます。
忙しい時や疲れている時だけサービスを利用するという柔軟な活用法もお勧めします。
脳梗塞後は嚥下(えんげ)機能に問題が生じる場合があり、食事形態の調整が必要なこともあります。専門の配食サービスでは、「ムース食」「ソフト食」など嚥下機能に合わせた食事を提供してくれるところもあります。
また、低塩分食など生活習慣病に配慮した食事も選べます。
食事の準備と片付けにかかる時間を考えると、配食サービスは決して「贅沢」ではなく、あなたの時間を生み出す「投資」と考えることができます。
その時間を休息や自分のケアに充てることで、長期的な介護継続につながるのです。
ボランティアと民間サービスの活用
話し相手になる「傾聴ボランティア」や通院付き添いをサポートする「移動支援ボランティア」など、地域の社会福祉協議会に問い合わせてみましょう。
また、家事代行サービスなど、公的サービスでは対応できない部分を民間サービスで補完するのも効果的です。
介護保険サービスだけではカバーできない部分を、ボランティアや民間サービスでうまく補うことが大切です。
例えば、介護保険では「見守り」だけのサービスは原則として提供されませんが、ボランティア団体では可能な場合があります。
また、地域によっては「介護者リフレッシュ事業」として、介護者向けのリラクゼーションサービスや旅行などを提供している自治体もあります。
地域包括支援センターや社会福祉協議会に相談して、あなたの地域でどのようなサービスが利用できるか確認してみてください。
まとめ
一人っ子の方が親の介護を担う場合、すべての負担が集中しがちですが、様々なサービスや制度を上手に組み合わせることで、その負担を軽減できます。
何より大切なのは「完璧な介護」を目指さないことです。あなた自身が倒れてしまっては、母親の介護もできなくなってしまいます。
介護は長期戦です。自分の心身の健康を守りながら、持続可能な介護体制を整えることを意識しましょう。
介護者自身が健康であることが、最良の介護につながります。
自分を大切にすることは、決して母親への愛情不足ではなく、長く介護を続けるための必要な選択なのです。
一人で悩まず、専門家に相談することが、最初の一歩です。
この記事が、同じような悩みを抱える方々の助けになれば幸いです。
おわりに ~まごとも利用のすすめ

今回は、一人での介護負担に対する不安と重圧への対処法を、3人の専門家・介護経験者の視点から解説してきました。訪問介護などの様々なサービスの利用があげられていましたが、より気軽に使えるサービスとして、大学生が高齢者の自宅に訪問することで、一人暮らしの高齢者の様子を定期的に見守りつつ 日常への刺激や人とコミュニケーションする機会を提供してくれる京大発ベンチャーが開発したサービス、『まごとも』について、もう少し詳しくご紹介します。
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『まごとも』は、介護福祉士監修の研修を受けた若者がシニアのもとを訪問し、一緒にお出かけや、スマホやタブレットの支援など介護保険では対応できない日常生活をサポートするサービスです。
『まごとも』では、若者との交流を通して、高齢者に精神面での活力を受け取っていただき、生きる喜びや目的を見出し、積極的に行動を起こせるようになると考えます。
「まごとも」を利用されたシニアの方の中には、車椅子状態で引きこもっていた状態から自主的に歩行トレーニングを始めて、補助器なしで歩けるようになった方もいらっしゃいます。
ご家族からは、「親の日常にハリが出た」「親がポジティブになった」など、嬉しい声を数多く頂戴しています。シニアの皆さまからは、「元気がもらえた」「楽しかった。ありがとう」など心から楽しかったと思える時間を提供しています。
また、業務終了後に笑顔の写真付きのレポートを提供させていただいています。ご家族の皆さまも元気をもらって、安心して、仕事やプライベートに集中できます。
「まごとも」によって、介護によるストレスを減らして、すぐに始めることができる親孝行をしてみませんか?
詳しくは、以下の公式LINEから詳細の情報をご覧ください。
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