高齢になると記憶力が落ち、物忘れが多くなるのは誰もが認めるところですね。
買い物に行ったのに 一つ買うのを忘れたとか、1時間ほど時間を見間違えたなどなら、「誰にでもあるミス」と笑ってすませられます。ところが、買い物に行っても何を買ったらいいのか分からず 同じものをいくつも買ってきたり、夜昼時間を取り違えて夜になっても「今は朝ですよ。」と言い張ったりするとしたら、これは問題です。
私は母(正確には義母)を10年ほど介護しましたが、やはり母が90歳になるころには認知症の症状が出てきました。私自身は、認知症についてあまり知識がありませんでしたから、専門家の方の意見や知り合いの人の例などを見聞きしながら、どのように対応すべきか試行錯誤を繰り返しました。
ここでは、私がこの10年の経験から学んだことや、知人友人の介護の例から言えることをまとめてみました。現在認知症の家族のいる人や これから介護する可能性がある人たちの参考になればうれしいです。
認知症とは?
認知症とは、いろいろな理由で記憶や思考などの認知機能が低下し、日常生活や社会生活を送るうえで困難が生じる状態のことです。ちょっとした物忘れが増えたからと言って、むやみに「おじいちゃんは認知症だ。」と決めつけるのは避けたいところです。
しかし 認知症になると、今 朝ご飯を食べたのに すぐに忘れてしまって、「まだ朝ご飯も食べさせてもらっていない。」と言うことがあります。また、財布が見つからないと「隣の人が盗ったに違いない。」と決めつけることもよくあることです。こうなると周りの人がいくら説得しても納得せず、本人も周りの人も大変困ってしまいます。
こんな症状があったら認知症かもしれません
認知症になると次のような兆候が見られます。
●記憶障害
- 物忘れがひどくなる。
- 食事をしたことやお風呂に入ったことも忘れてしまう。
- 大事な物でもすぐになくしてしまい、見つけられない。
- なくしたものは誰かが盗っていったと決めつけることも多い。
●失語
- 言葉が出てこない、思い出そうとしても思い出せない。
- 「あれ、それ、」などとは言えても、それ以上を思い出せない。
- 言葉の意味が分からなくなる。
●実行機能性障害
- 料理をしようとしても、手順が分からない。
- 手紙などを書こうとしても字がうまく書けないし、文章を組み立てられない。
これらの兆候はだんだん重くなり、最初は「朝ごはんは食べましたよ。」「おまんじゅうは昨日食べたでしょ。」などと言えば納得しますが、だんだんそれでも納得しなくなっていく場合が多く、家族は対応に苦慮します。
認知症と分かったらどうしたらいい
しっかり者だった母がおかしなことを言ったり、やったりするようになると家族中が心配するのは当然ですね。本人も何かおかしい、どうしてできなくなったのか悩んでいる場合もあります。
我が家の場合は、母がお風呂に入ったのに「まだ入っていなかったから」と もう一度お風呂に入ろうとしたのを見て、父がこれはただ事ではないと気付きました。父は割合進歩的な考え方をする人で、「最近は認知症に効く薬もあるそうだから、病院へ連れて行ってくれ。」と言い出しました。
それで、母を病院へ連れて行き、認知症が重くなってからは、デイサービスも利用するようになりました。具体的にやったことは、次のような具合でした。
病院へ行って診てもらう
誰でも自分の母(あるいは父)がつじつまの合わないことを言ったり、おかしな行動をしたりするようになると動転します。そして、病気かもしれないからお医者さんに診てもらおうと考えるのは当然ですね。
しかし、高齢の母(あるいは父)に「認知症かもしれないから、病院へ行って診てもらおう。」と言っても、「私はぼけ老人ではない。」と言って病院へ行きたがらないことも多いです。そのような場合に本人を納得させることはかなり大変です。事情をよく知る家庭医の先生がいる場合は、その先生に相談するのが一番です。
幸い、母は家庭医の先生のところに定期的に薬をもらいに行っていたので、「いつもの薬をもらうついでに、体のことや気分のことも診てもらいましょう。」と言って診察を受けてもらうことができました。
家庭医の先生は母のことを良く知っていたので、次のような簡単な質問をしました。
- 自分の名前を言えますか。
- 今住んでいるところはどこですか。
- 時計を見て時間が分かりますか。
- 今日は誰と来ましたか。
他にも物の名前を言うとか数字を見せて質問するなどのテストをしてくれました。先生の判断では、やはり多少認知症の傾向があるということで、認知症予防の薬を処方してくれました。
素人の私たちはこの薬を飲むと劇的に効果があるものと期待しましたが、効果のほどはすぐには判断することはできませんでした。母は薬を飲むことも忘れてしまうことが多いので、父や私が飲んだかどうか確認する必要もありました。
ちなみに、薬を飲み始めてから数か月たって、父が「おばあちゃんは、今までは好き嫌いを言わない方だったけれど、最近、これは嫌だとか嫌いだとか言うようになっただろう。これはあの薬が効いたせいだよ。」と言いました。そういえば私も、前より母が自分の好みを主張するようになったと感じていたので、それが薬の効果だというのなら そうなのかもしれないと思いました。(ただし、これは認知症の症状によるものである可能性もあります。いずれにせよ、薬の副作用についてはよく確認しておくべきであるといえるでしょう。)
それにしても、薬によって記憶が良くなるとか 物分かりが改善されるかもしれないと考えたのは、期待のしすぎだったのかもしれません。薬の効果には個人差があるので、もっとはっきりと改善される人もいるとは思いますが、誰もがそうなるのではないことが分かりました。
母の場合は薬の効果ははっきりしませんでしたが、薬を試してみたことは意義があったと思います。認知症が重くなってから気付いて「もっと早く薬を飲ませてあげればよかったのに。」と後悔することがなかったからです。また、物分かりが改善されることはありませんでしたが、より悪化するのを防ぐのに役立っていた可能性は十分あるといえるでしょう。
デイサービスなどを利用する
認知症が進むと、体はしっかりしていても介護認定を受けることができるようになります。それにはやはりお医者さんの診断書が必要なので、認知症の薬をもらうためにではなくても、お医者さんに診てもらわなくてはなりません。
介護認定が受けられれば、デイサービスや訪問看護やヘルパーさんを頼むようなサービスも受けられます。
認知症の場合には 本人も困っていますが、家族も一日中世話をしなくてはならない、あるいは見守りをしていなければならないなど 負担が大きくなります。
そのような場合には週に1日でもデイサービスに行けば、本人はお風呂に入って食事をし、他の人と交流することができ、良い気分転換になります。そして 介護をする家族も、自由に休んだり買い物をしたりするなどして多少のリフレッシュをすることができるので、公的援助を受けることはとても大事です。
ただ困るのは、家族はそうしたサービスを受けさせたいのに、本人が「知らない人がいる所へは行きたくない」と主張する場合です。高齢になればなるほど、知らないところへ行くのは億劫になるものなのですね。
我が家では、父が母に「ぜひ行ってきなさい。」と強く言ったことで、母は内心不本意だったようですが、とりあえず行くことになりました。母が何とか納得してくれたので、私たちはとても助かりました。
知人の例ではやはり高齢のお母さんがデイサービスに行きたがらず、娘さんたちが、「お母さんは人気者だから、みんなが待っているわよ。」あるいは、「もうお金も払ってしまったから行かなくちゃ損よ。」などと 知恵を絞ってデイサービスを勧めて、何とか行くようになりました。
家庭で介護するコツは?
母(あるいは父)が認知症であると分かったとしても、家族がそれだけで母をホームなどの施設に入所させることはまずないでしょう。たいてい本人は家にいたいと希望しますし、ある程度身の回りのこともできるうちは、家族も家で介護しようと思うものですね。
しかし、認知機能がさらに衰えてくると普通の生活を続けることは難しくなります。何度言っても 話の内容を忘れてしまって聞き返されたり、大事な物をなくしたりすることが続くと家族も相当疲弊します。
些細なことは目をつぶるとしても、火の始末や重要な書類の管理などに関しては できる限り支障のないようにするには、それなりの工夫が必要です。
私が母のためにやってみたのは次のようなことです。
薬の管理
母はそれまでにも持病の治療のために薬を飲んでいました。ところが、ある時からいくら薬を飲んでもあまり効き目がなくなり、お医者さんも薬の量を増やすなどしてくれましたが、なかなか病状は改善しませんでした。後でわかったことですが、そのころから物忘れがひどくなり、1日3回の薬を2回で良いと誤解し、その2回もよく飲み忘れていたのです。
私が朝晩手伝いに行くようになってからそのことが分かり、薬を飲んだかどうか確認するようになって、ある程度改善しました。しかし、昼は父と母だけなので、やはり飲み忘れが多く、薬の種類が多くなるとますます混乱するようになりました。
そこで主治医に相談して、一度に飲む薬を一回ずつ一袋にまとめてもらって、その袋に日付と飲む時間(朝、昼、晩)を書き込んでもらうことにしました。こうすると飲み忘れも減り、かなり状況は改善されました。ただし、飲むこと自体を忘れてしまうことはよくあることだったので、父や私が確認するように気を付けました。
買い物はどうする
母は脳出血の後遺症で少し足が不自由で、年齢が進むにつれて外出が難しくなりました。
私が手伝いに通うようになる前は、父が買い物に行っていました。私が手伝いをするようになってからは、私が母に必要なものを聞いて買いに行くようになりました。
ところが、母はだんだん記憶力が衰えて、何を買ってきてほしいか、必要な物が何なのかも忘れてしまうようになりました。そのつど、ティッシュがない、かゆみ止めのクリームがないなど一日に何度も買い物に行くこともしばしばでした。これでは父も私も体がもたないということは目に見えていました。
そこで、私はいつも必要なもの、あった方がいいものの表を作り、母が時間のあるときに、あるものには〇を、ないものには×を記入してもらうことにしました。一例を挙げると次のようになります。
肉 | 〇 | じゃがいも | |
魚 | 〇 | 人参 | |
卵 | × | 玉ねぎ | |
キュウリ | 〇 | 大根 | |
トマト | × | キャベツ |
ティッシュペーパー | 〇 | 洗濯洗剤 | |
トイレットペーパー | × | ハンドクリーム | |
台所洗剤 | 〇 | 保湿クリーム |
この表を見て、母がしるしをつければ、忘れ物をしないで買い物ができると考えたのです。ところが、この方法はあまり長く続きませんでした。母は冷蔵庫の中を見ても、何があるのかを理解することができなくなったからです。結局、私が表を見ながら、ないものをチェックして買うようになりました。
ヘルパーさんに入ってもらってからは、父が苦労しながら必要なものをメモして買い物を頼んでいました。
火を使うには
高齢者が火を使うことは、家族にとっては一番心配なことですね。特にガスを付けたことを忘れてしまう認知症の人が、料理をしたがる あるいはしなくてはならないとしたら、これにはかなり危険が伴います。
母は足が不自由だったため あまり積極的に料理をしようという気にはならなかったので、かえって安心でした。それでもたまにはお湯を沸かそうとしたり、お風呂のガスを付けたりすることがあったので完全に安全とは言えませんでした。
試行錯誤の末、基本的には家事や料理は私と父、後にはヘルパーさんがすることに決めて、母には台所に立たないようにしてもらったので、事なきを得ました。
知人宅では、認知症の傾向にあるおばあちゃんが料理をしたがるので、オール電化にして、台所では火を使わない構造にしました。これならば、火事になる危険性は少ないですが、デメリットは電化用の鍋やフライパンは底が厚く重いことでした。この家のおばあちゃんは「鍋が重すぎる」と困っていました。現在は電化用の鍋もかなり改良されて軽くなりましたが、新しいものを使いこなすことは高齢者にとっては負担になることもあるのですね。
外出したいときは
母は、外出が好きではありませんでした。足も不自由だったので、一人でどこかに行ってしまうようなことはなかったので、私たちは安心でした。
しかし、認知症になっても足腰は丈夫という人もいますね。知人のおばあちゃんは、息子さん宅に引き取られてからも、買い物に行く、歯医者に行く,銭湯に行くと言っては、出かけて道が分からなくなり、タクシーに乗って帰ってきたり、警察官に付き添われて帰ってきたりするので、家族は大弱りでした。
基本的には認知症の人は一人で出歩くのは危険なので、誰かが付き添うのがいいですね。ただ、困るのは本人が「私はぼけてはいない、道だってよく分かっているから大丈夫。」などと言って付き添いを嫌がることがあることです。
こういう場合は、ケースバイケースで対処するほかありません。
- とりあえず一人で行かせ、家族が後から様子を見についていく。
- 「歩くと疲れるでしょうから、車で送りましょう。」ともちかける。
- お医者さんに「遠くまで歩くのは無理と言われていますよ。」と諭す。
などのやり方を参考にしたいところです。
時間を間違えるなら
高齢者は仕事に行く必要はない場合が多いので、曜日や時間の感覚も狂いがちです。朝なのに「夕方の6時だ。」と言い張ったり、日曜日の朝なのに「学校に行かなくていいの。」などと家族をせかしたりすることもあります。
私は毎朝8時ごろ母の手伝いに行くことにしていましたが、ある朝行ってみると、父が困り切って「おばあちゃんが、今は夜の8時だと言ってきかないんだよ。」と言ったことがありました。母は なかなか今が朝の8時であることを認めませんでしたが、夜の8時にしては暗くならないし、ゴミ収集車も来ているからということで、やっと分かってくれたようでした。
母は家の中ばかりにいたし、日当たりの悪い家だったので、朝と晩を区別できなかったのではないかと思います。
また、時計は従来通りの振り子時計だったので、その日のうちに電波時計を買って、12:00の次は13:00といったように24時間で数字が出る時計に買い換えました。これならば、8:00と20:00を間違うことはないだろうと思ったからです。
これはある程度効果があったようです。以後、早朝に電話がかかってくるようなことは減りました。
書類や現金の管理は
認知症の高齢者は片付けができなくなり、何をどこに置いたかも わからなくなります。大事な市からのお知らせや書類、保険証や診察券、現金や手紙などもよくなくなります。そのたびに家じゅうを探し回るのは家族にとっては大変な負担です。
我が家の場合は父がまだ元気だったので、重要なものは父に管理してもらいました。書類はこの引き出し、保険証や診察券はこの引き出しというように置くところを決めてラベルを貼り、そこへ必ず入れるようにすることで、ある程度なくしものは減りました。
しかし、時間がたつと父も全部を管理することが難しくなり、私や義妹ができるだけチェックするようにしましたが、完全に管理できていたとは言い難い状態でした。
認知症になっても生活の質を保つために
認知症というと何から何まで分からなくなることを想像しますね。しかし、実際はある一部の記憶や判断が鈍くなるだけで、その人の人格そのものが損なわれてしまうわけではありません。
仕事や作業はできなくなっても、趣味を楽しんだり、美味しい食べ物を食べたりして喜ぶことはできます。家族や友人と会話をするなどして、いきいきとした時間を過ごすことも可能なのです。
ここでは、認知症になった人がより楽しく過ごせる工夫を紹介します。
話し相手をする
認知症の人を見ると、何から何まで分からなくなった人と思いがちですが、実際はそうではありません。普通に会話はできるし、一緒に笑ったり、喜んだりすることもできるのです。一人暮らしをしている場合や、二人暮らしでも 一方が病気で臥せっているような場合は、一日中 話もしない状態では、ますます状況は悪くなるばかりです。
認知症の人でも、普通に会話をしたいと思っている人がほとんどです。「今日は、お身体の調子はいかがですか。」でもいいですし、「銀杏並木が色づいてきましたね。」でもいいのです。何気ない話でも、一緒に会話をすることはその人の生活の質を高めるのに役立ちます。
高齢になると前に話したことをすっかり忘れてしまって、また同じ話を繰り返すことがありますが、これは記憶力が衰えるので当然のこととも言えます。それでも、何度も同じ話を聞くのはやり切れないと思う気持ちもよく分かります。今になって思えば「あーそう。」「それはすごいね。」などと適度の相づちを打ちながら聞いてあげるのも、親孝行の内なのかもしれません。
私は以前、有償ボランティアで高齢者の話し相手をしていたことがありました。80歳ぐらいの男性でした。奥さんを亡くしてから一人でほとんどのことをしてきましたが、一人で家にいるのは寂しいので、話し相手と見守りを頼みたいということでした。この人は、認知症の傾向はほとんどありませんでしたが、一人でいて誰ともコミュニケーションをとらないのは不健康だと思っていたようです。
私は、2時間ほど一緒に時代劇などを見ながら、彼の若いころの活躍について話してくれるのを聞いたものです。この人は、2時間一緒に過ごすととても元気になるように思われました。やっぱり人との交流は大事ですね。
介護保険などを使ってヘルパーさんを頼むことはできますが、身体の介護以外のことでは一般の看護師やヘルパーさんをお願いすることはできません。
しかし、家族やまわりの人だけでは、高齢者の話し相手などのお世話までは手が回らないことがあります。そのようなときは、ボランティアや有償ボランティアさんなどにお願いして、高齢者の相手をしてもらうのは必要なことではないかと感じています。
東京都や大阪府、京都府で活動している「まごとも」は若い人が中心となり、高齢者の方々が安心して生活できるようにサポートすることを目指しています。介護保険ではカバーできない、外出のお手伝いや話し相手など広い分野で高齢者のお手伝いをしています。家族だけでは介護しきれない場合はこのようなサービスをお願いするのは良い方法ですね。
協力して趣味などに楽しみを見出す
認知症といっても、まだ身体はそれほど弱っていない人ならば、少しの時間でも自分の趣味などに楽しみを見出すことは、いきいきとした生活をする上で大事です。難しいことは無理でも、大人の塗り絵をするとか、絵手紙を描いている人もいます。ある老人ホームで見かけた老婦人は歌が好きで、日がな一日童謡を口ずさんでいましたが、いつも楽しそうでした。
母はあまり趣味のない人でしたが、気持ちは案外若くて、晩年はマンガを読んでいました。それもちょっとしたリフレッシュになっていたようです。「お母さん、大人がマンガなんておかしいですよ。」などと言わなかったのは正解でした。
これをしなさいと押し付けるのではなく、絵の道具を揃えてあげる、歌の本を買ってきてあげる、マンガを借りてくるなど、側面から協力したいところですね。
できることは積極的にしてもらう
高齢になると体力や気力が落ちて、できることでもやらなくなってしまう傾向があります。しかし、「こんなことはできないでしょう」と言って 何でもかんでもやってあげるのは親切ではないかもしれません。ちょっとしたことでも「自分でできた」という達成感も必要なのです。
父は、母が料理ができなくなっても、「箸を持って来て。」「お皿を並べて。」と母のできそうなことを提案して、やらせていました。それ自体は小さなことですが、食事の支度をするということを思い出させるため、そして 母のできることを残しておくためだったと思います。今思えば重要なことでした。
被害妄想や空想に陥ったらどうする
高齢者のお世話をしている人の話を聞くと、「うちのおばあちゃんはなくしものをすると、誰かが盗っていったとか、意地悪をする人がいるなどと言うので困る。」とか、「○○さんがお金をくれと言った、などと空想話をするのでいやになる。」というようなことがよくあります。このようなことが起きるのは、認知症の人が「作り話をしてやろう」と思ってわざと 言っているからではなく、判断力がなくなるために本当にそう感じることがあるためです。
ただし、周りの人はこの種の話に翻弄されることもあるのは問題です。ここでは、そうした被害妄想や空想話に対処する方法を考えてみましょう
差し支えないことは黙認する
認知症の人がするちょっとした空想話は聞き流すのがいいですね。
母は盗まれたという話はしませんでしたが、入院中には「○○さんが私を迎えに来てくれると言った。」とよく言いました。おそらく、早く帰りたいという気持ちが「迎えに来てくれる。」と空想話につながったのだと思います。私も最初は「それは夢を見たのでしょ。」などと言って、現実ではないことを分からせようとしましたが、あまり効果はありませんでした。
この種の空想話はすぐに現実ではないことが分かりますから、「そうならいいわね。」「よかったわね。」ぐらいに受け流し、真剣に「そんなことあるわけないでしょ。」と反論しない方がいいですね。
他の人の迷惑になる場合は阻止する
空想話が本人だけの問題だけで済むのならば放置するのがいいとして、「隣の人が私の財布を盗った。」「○○さんが私のおにぎりを食べた。」といった被害妄想が起こったら、どうしたら良いでしょうか。
「そんなことはありませんよ。」で納得するなら助かります。また、なくなったものを探し出してあげれば納得するでしょう。しかし、本当に見つからないことも多いのが頭の痛いところです。
他の人に被害が及ぶときは多少きつい言い方でも、「財布は盗られた訳ではない、よく探しましょう。」ときっぱり言うしかありません。「忘れてしまっていますけど、おにぎりはおばあちゃんが食べたのですよ。お皿も残っているでしょう。」と言う以外にないでしょう。
若年性認知症にも気を付ける
認知症というと、80~90歳あるいはそれ以上の人のことが多いですが、60歳ぐらいでも発症することがあります。これ(65歳未満で発症する場合)を若年性認知症と言いますが、年が若いだけになかなか診断がつきにくいのが問題です。しかし、誰でも分かるはずのことが分からないとしたら、若年性認知症を疑うのが妥当でしょう。
ある60代の女性は、自分の両親がすでに亡くなってから何年もたっているのに「二人は田舎にいて元気でやっている」と言い、子どもの年齢も全く思い出せない、また 自分の孫が男の子か女の子かも分からなくなりました。
このケースでは、ご主人が奥さんの異変に気付いて、介護認定を申請しました。現在はデイサービスに通いながら家庭生活を続けていますが、気付く人がいなかったらかなり状況は厳しいものになっていたでしょう。
認知症はそれほど高齢にならなくても発症する可能性があることを知っておくことは大事ですね。
まとめ
●母(または父)に認知症の症状がみられるようになったら、早めに病院へ行き、介護認定を受けて公的サービスを受けましょう。
●家庭では家族が協力して、認知症の人が安全に生活できるように気を付けましょう。
●必要に応じて、有償ボランティアなどの外部の人の協力も得て、認知症の人が快適に生活できるように工夫しましょう。
●若年性認知症にも気を付けて、家族が安心して生活することを考えましょう。
おわりに
本記事の中では、認知症になってしまった際に 少しでも生活の質を高めるための方法の一つとして、人とのコミュニケーションの機会をもつことを挙げました。人と交流する機会をもつことは、認知症の悪化を防ぐだけでなく 認知症ではない人が認知症になってしまうことへの予防にもつながると考えられます。しかし、40代、50代は、仕事と家庭の両立に非常に忙しい年代です。親とゆっくり話す機会をあまり持てない方も多いのではないでしょうか。とはいえ、親に先立たれてから後悔はしたくない。
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参考文献
- 長谷川和夫著 認知症でも心は豊かに生きている 中央法規出版
- NHKここが聞きたい!名医にQ 認知症ベストアンサー 主婦と生活社ライフ・プラン編集部